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スタイルの違い

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 ここではカポエイラの世界でもっともデリケートな問題、スタイルの違いについて説明したいと思います。

 たとえば何の予備知識もなくブラジルに行ってカポエイラを見たとしましょう。観光客向けのショーで、たまたま通りかかった公園で、友人に誘われて見学に行ったカポエイラの道場でと、見る場所・グループによって「これが同じカポエイラか」と思うほど、その特徴に大きな違いがあることに気づくはずです。

 それがスタイル(流派)による違いなのか、同一流派の中のリズムのヴァリエーションなのか、あるいは単にジンガ(カポエイラの基本ステップ)の個人差なのかを判断するには、ちょっとカポエイラについて知っておく必要があります

 ただし最初に強調しておきたいことは、今日のカポエイラの多くが、もはや「アンゴラ」「ヘジオナウ」という単純な枠組みの中でとらえきれない状況にあるということです。その新しいタイプのカポエイラを、ここでは便宜上「カポエイラ・コンテンポラニア(現代のカポエイラ)」と呼んでおくことにし、後に詳しく解説します。

 もちろんコンテンポラニアの成り立ちを理解するうえでも、アンゴラとヘジオナウについての知識は欠かせません。まずはこの2大カテゴリーを整理しておきましょう。

 

   ヘジオナウ アンゴーラ 
創始者 メストリ・ビンバが、カポエイラを格闘技として実用的なものにするために創始。伝統的なカポエイラ(≒アンゴラ)にバトゥーキの要素を取り入れた。1920年代の後半にはヘジオナウのアイデアを完成していたとされる。
特定の創始者を持たない。アンゴラという名称自体が、ヘジオナウの登場以降に、それに対抗する概念として出てきた。それまでは単にカポエイラ、あるいはカポエイラージェン、ヴァジアソンなどの言葉で呼ばれていた。ヘジオナウ以外のカポエイラはすべてアンゴラに含まれるはずだったが・・・・。
楽器
ビリンバウ1本、パンデイロ2枚。初期の頃はヘコヘコも使われたというメストリもいる。

メストリ・パスチーニャがアンゴラの正式な楽器としてビリンバウ3本、パンデイロ2枚、アタバキ、アゴゴ、ヘコヘコそれぞれ1つずつと決めた。今日ではこれが基準になっているが、本来、楽器の種類、数に厳格な決まりはなかった。パスチーニャの手記には「最近はカポエイラのホーダからギターが消えてしまった」と嘆くくだりもある。
スピード
一般に早めだが、ビリンバウのトーキによって異なる。例えばバンゲラ(banguela)はアンゴラの名残がみられ、サン・ベント・グランジよりゆっくり目で、床の動きが多い。
一般にゆっくりめ。ただしビリンバウの節によってスピードも変わってくる。ヘジオナウより早いアンゴラもある。
技の高さ
立った態勢からの攻防が中心。シントゥーラ・デスプレザーダといって、相手を腰の上に乗せて投げる練習もする。これは転ぶことに対する恐怖心を除くのが目的で、実際のジョーゴにはまず用いられない。
四つんばいの姿勢を多く用い、立った態勢の場合も蹴り足を腰より高く上げることは少ない。足払いを警戒する必要性から、自然に蹴る高さも低くなる。
間合い
アンゴラよりは遠いといえるが、オリジナルのヘジオナウは、現在よりもかなり間合いは近かった。ハステイラが来れば、それを跳んで避けていた。
近い。近いがゆえに、足を高く上げると足払いをもらいやすい。自然に態勢は低く、攻撃を受ける面積を少なくすることになる。
暴力性
高い。格闘技としての有効性が求められた背景もあり、相手を転ばせるための技も多い。
低い。基本的に相手に技を当てず、相手との調和を重んじる。ただし温和さの中に常に暴力性も隠されており、最大限の注意を払っておく必要あり。

 

駆け引き スピードが早い分、フェイント、不意打ちなどの駆け引きが少ない。 伝統的なカポエイラの大きな特徴のひとつ。わざと隙を見せて相手の攻撃を誘い、反撃を食らわせるといったことが非常に多い。
ジンガ 力強い。その反面、現在のカポエイラからはジンガのダンス的要素はどんどん失われつつある。ビンバの古い弟子たちのジンガはアンゴラのジンガにたいへん似ていた。 踊るように軽やか。そのステップには個人差がとてもある。ただこれも最近は画一化の傾向あり。メストリ・ジョアン・グランジの影響が大きすぎ、多くのアンゴレイロが彼の動きをまねるところから入っているため。
儀礼 弱い。簡略化されている。そのかわりバチザードといって、初心者がはじめてホーダに入るときに行う儀式や、フォルマトゥーラという修了式が発明された。アンゴラにはこれらがない。 強い。ホーダへの入り方、タイミング、相手との入れ替わり方などに細かい決まりがある。ビリンバウの指揮に従うというのが共通の要素。いくらカポエイラの技術に優れていても、儀礼の知識のない者は評価されない。
練習方法 体系立てられている。ビンバは、セクエンシア(型)という、申し合わせた攻防のパターンを8つ考案した。生徒が効率よく上達するために、教える内容を段階的に分けた。
今日でこそ各グループがそれぞれに工夫を凝らしているが、かつては学校という形態そのものがなかった。もともとアフリカ文化は口頭伝承に高い価値を置いているのも一因。最近はアンゴラでも、独自のセクエンシアを採用することが増えている。
生徒層
中産階級の白人の子弟が多かった。当時、異種格闘技戦で無敗を誇っていたビンバの名声と、カポエイラがはじめて体育として公認されたことが背景にある。

貧しい黒人が多かった。19世紀以来、カポエイラの中には常に白人、混血の存在があったが、とくにバイーアのカポエイラでは圧倒的に黒人の割合が高かった。
どちらか
と言えば
格闘技。現在のカポエイラは、コンテンポラニアといって、ヘジオナウをベースに、さらに東洋系武術の要素を加えたり、体操競技のアクロバットが加えられたりして形態を変えてきた。ビンバが発明したヘジオナウを、技術的にもっとも忠実に受け継いでいるグループのひとつは、ネネウ(ビンバの息子)のグループ(フィーリョス・デ・ビンバ)である。 格闘技的な緊張感を常に持ち合わせながらも、ダンス・演劇的な性格が強い。アンゴラにおいては、「あいつは始終微笑みながらカポエイラをしている」というのはほめ言葉になる。顔の表情や態度で相手をからかったり、わざと怯えているふりをするのも駆け引きのうち。
トーキ
(ビリンバウの節)
サン・ベント・グランジ・ジ・ヘジオナウ、カヴァラリア、バンゲラ、サンタ・マリア、イウーナ、イダリーナ、アマゾナス、イノ・ジ・カポエイラ・ヘジオナウの8種。 アンゴラ、サン・ベント・ピケーノ、サン・ベント・グランジ・ジ・アンゴラ、カヴァラリア、アパニャ・ラランジャ・ノ・ション・チコチコ、ジョーゴ・ジ・デントロなど。各メストリなどによって違う。技の名称と同じで、同じトーキが別の名称で呼ばれていたり、違うトーキが同じ名称だったりする。

 

カポエイラ・コンテンポラニア

創始者  コンテンポラニアは、サンパウロやリオ・デ・ジャネイロで、アンゴラとヘジオナウが融合される中で生み出された。したがって特定の創始者を持たない。

【サンパウロのカポエイラ 1】

楽器  グループによって様々。ビリンバウ3本、パンデイロ1枚、アタバキ1台というのが最も一般的だが、これにパンデイロがもう1枚増えたり、アゴゴやヘコヘコが使われる場合もある。

また近年リリースされるカポエイラCDでは、エレキギターやシンセサイザー、フルート、アコルデオンなど様々な楽器が採用され、ポピュラー音楽のように耳障りのよいものも発表されている。反面、リードヴォーカルとコーラスの伝統的な掛け合い構造が崩れ、カポエイラのジョーゴにはそぐわないものが出てきているのも確かだ。

スピード

 コンテンポラニアのホーダでは、最初にゆっくりのリズムでアンゴラを行い、次第にスピードを上げてサン・ベント・グランジに移行するパターンが多い。

一般的な傾向としては、アンゴラの部分は時間的にも短く、内容的にも貧弱なことが多い。サン・ベントに移行したとたん、助走をつけたバク宙などをしながらホーダに飛び込んでいく。ホーダのほとんどの時間をサン・ベント・グランジに費やすグループが多い。

 

技の高さ  一般的に高い。アンゴラのジョーゴといっても、単にヘジオナウ的な動きをゆっくり行うだけという団体が多い。技術的にアンゴラとヘジオナウの境界があいまいになっている。

またカベッサーダ(頭突き)と並んでカポエイラの特徴的な武器であるハステイラ(足払い)があまり使われなくなってきているのも、高い技を安易に繰り出せる原因の一つと考えられる。ハステイラを警戒しだすと、自然と攻撃技は低くなる。

間合い
 遠い。スピードが速い分、中に入り込むのが難しい。一般的にアクロバットに対する執着が強いため、間合いをまったく切った状態で宙返りなどを繰り返す傾向がある。間合いが遠いからカベッサーダやハステイラも届かないし、それらがないから安心してアクロバットができるという循環が見られる。このタイプのジョーゴしか練習していない人が、アンゴラ系の人とジョーゴをすると、ことごとくスキに付け込まれてしまうのは、間合いに対する感覚の違いに原因があるだろう。
暴力性  高い。最近は練習科目に柔術を取り入れたり、ウェイト・トレーニングでボディービルダー並みに筋肉を鍛える団体、個人も出てきている。伝統的にカポエイラでは、手の裏と足の裏、あるいは頭の先しか床についてはならなかったが、最近のホーダでは取っ組み合った状態で床に転がることが平気で行われる。
駆け引き  顔の表情やしぐさ、肩の振りや足のステップなどで相手をかく乱するようなタイプの駆け引きは少なくなってきている。肉体の直接的な力に頼るあまり、技を避けるより、手でブロックして、足を取りにいくような場合もある。カポエイラに限らず、アフリカ起源の戦闘ゲームに共通する特徴の一つとしてフェイントを多用するという点があるが、この伝統も弱まってきている。

 

ジンガ  画一的なジンガが多い。生徒の数が増えるにしたがって、練習の効率性が求められ、マニュアル的な振り付けに基づいた練習が多くなってきたことが背景にあると考えられる。かつては同じグループの中で同じメストリに習っていても、生徒一人ひとりが非常にオリジナリティーあふれるジンガをしていた。
儀礼 弱い。コンテンポラニアの団体がするアンゴラのジョーゴでは、シャマーダなど儀礼的な要素はほとんど見られなくなってきている。ホーダの入り方にしても、伝統的にはビリンバウの下からしか入ることが許されなかったが、最近はホーダのどの部分からでも飛び込んでいけるルールを採用しているグループもある。

 またホーダに入る順番も、かつてはビリンバウの下に控えている人が優先であり、メストリが入るときを除いては、順番が尊重されたものだが、最近は後ろからどんどん抜かしてコンプラをする状況が見られる。これらをコントロールするべきビリンバウの権威がないがしろにされているのも、原因の一つかもしれない。

 

練習方法 マニュアル的。かつては新しい人が入門してくると、メストリは手を取ってジンガを教えていた。カポエイラがスポーツ化した今日、グループによっては、かなり綿密に練られた指導要領があるようだ。これは一度に大人数を相手にでき、技術的にも一定のクオリティーを維持できる利点がある反面、ジンガのシルエットを見ただけでグループ名を特定できるほど、一人ひとりの個性が薄められてしまう傾向がある。
生徒層 ブラジルの国民的スポーツとして発展した今日、経済的な階層、性別を問わず、すべての人種、年齢層の人に取り組まれている。カポエイラの大衆化という観点から見ると、サンパウロやリオで形成されたカポエイラ・コンテンポラニアが果たした役割は大きい。
どちらか
と言えば

アンゴラがダンス的、ヘジオナウを格闘技的とおおざっぱに定義するなら、コンテンポラニアはアクロバット的といえるかもしれない。相手とのからみよりも、自分のパートをアクロバットで彩ることに執着する傾向がある。

 

トーキ
(ビリンバウの節)
一般的にはアンゴラとサン・ベント・グランジ。近年はベンゲラがジョーゴのタイプとして確立されてきた。

 

■コンテンポラニアはハイブリッド種
■さて上のように書いてみると、まるでコンテンポラニアは質の低いカポエイラのように見えますが、今日の全世界的なカポエイラの普及がコンテンポラニアの功績である反面、カポエイラのエッセンス、伝統的な側面において多くを失ってきたのも事実です。それをカポエイラの「発展」「進化」ととらえる考え方がある一方で、古いメストリほど「堕落」「後退」という見方も持っています。■近年、伝統を強調するカポエイラ・アンゴラが急速に愛好者を増やしてきたのは、コンテンポラニアが失ってきたものを、大切に守ろうとしているからではないでしょうか。グループごとアンゴラに転向するコンテンポラニアのメストリも出てきています。

■コンテンポラニアの立役者の一人でもあるメストリ・スアスナが、雑誌のインタビューに答えて、サンパウロのカポエイラを次のように批判しています(RC, no.4)

 

「かつてホーダはアミーゴたちが集う場だった。しかし今ではライバル同士がケンカする場に変わってしまった。あの時代、カポエイリスタたちは狡猾なジョーゴをしたものだが、心はまっすぐだった。そこにはある種の気高さがあった」

「今日のカポエイラは、筋肉トレーニングと柔術が流行し、カポエイラ本来の技術を見失いかけている。筋肉で相手を威圧するような雰囲気さえ見受けられる。そもそもカポエイラは弱者が強者に立ち向かうために生まれたものだった。それが逆に強者が弱者をいじめているような状況だ」

■しかしコンテンポラニアの名誉のためにも強調しておかなければなりませんが、コンテンポラニアのなかにもアンゴラのバテリアに勝るとも劣らないハーモニーとエネルギーを持つ団体もありますし、グループ名に「ヘジオナウ」という言葉が入っているグループ以上に、オリジナルに近いヘジオナウを実践しているグループもあります。おそらく全世界のカポエイラ団体の80%以上はコンテンポラニアに属するでしょうから、「コンテンポラニア」というカテゴリーで一括りにするには、その考え方も技術的な特徴もあまりに多様すぎるというのが現実です。

■たとえて言えば、コンテンポラニアは、ヘジオナウとアンゴラのハイブリッド種です。しかしこれまでは父方からも母方からも「お前は雑種だ。うちの血統を受け継いでいない」と、批判されてきました。しかし「子はかすがい」とも言うように、ヘジオナウとアンゴラの橋渡しをしたのは、他でもないコンテンポラニアだったということもまた事実です。そしてコンテンポラニアの中にも、母親似のもの、父親似のもの、柔術の婿養子を迎えたもの、その他の突然変異種など、およそ考えられる限りのバラエティーが揃っています。

■さまざまな批判にさらされてきたコンテンポラニアの将来は、父母のいいところを受け継ぎながら、かつ「自分はどこへ向かうのか」という独自のアイデンティティーを確立する先にあると言えるかもしれません。

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