バイーア料理を代表するアカラジェ。サルヴァドールに行った人なら必ず食べたことがあるでしょう。カポエイラの歌にもたびたび登場しますね。メストリ・ガトのラダイーニャ「Cartão postal」Onde ficam as baianas vendendo acarajé…..

今日も文化盗用の小ネタです。

もともとアカラジェは、カンドンブレ(アフリカから連れてこられた人々がブラジルで始めた宗教)で風をつかさどる女神イアンサン(Iansã)にささげられるお供えが、バイーアの土着の味として一般のブラジル人たちにも広まっていったものです。そういう意味では、カルルーもヴァタパーもアバラーも、今日典型的なバイーア料理とされるものの大半はカンドンブレのお供えに発しています。

アカラジェは、その料理のプロセス、売り子のバイアーナたちの衣装、販売台(tabuleiro)の飾りつけにいたるまで、カンドンブレの伝統に深く根差しています。さらには奴隷制の時代から今日まで、女性たちが最底辺の生活を支える糧を得る重要な生業でした。アカラジェは、宗教的な意味合いは言うまでもなく、それを売る女性たちにとっては自らのアイデンティティーそのものだとも言えます。記事の最後に見ますが、メストリ・パスチーニャの未亡人ドナ・ホメーリアが、メストリのお葬式を出す費用を出せたのもアカラジェのおかげだったと回想しています。

「アカラジェ売りのバイアーナの業績」(Ofício da Baiana de Acarajé)はジウベルト・ジルが文化大臣だった2004年にブラジルの無形文化遺産に登録されましたが、そのころからすでに様々な形で伝統の形骸化が危惧されていました。さらに10年位前には、折からのプロテスタント勢力拡大の波の中、改宗したバイアーナたちが、アフロ・ブラジル文化を悪魔的なものとみる教義に従って、アカラジェの名を「Bolinho de Jesus」(イエス様のボール)と改称して売り始めたことがありました。その後政府がアカラジェをアカラジェ以外の名前で売ることを禁止する法令を出したら、「acarajé gospel(福音のアカラジェ)」「acarajé ungido(聖油のアカラジェ)」などの名前で出てきたそうです。これは昨年も記事にした福音のカポエイラ(capoeira gospel)に通じますね。

もし本当に教義上アカラジェが認められないなら、いっそアカラジェの消費そのものをやめればいさぎいいものを、販売も消費もそのままで、名称だけをその歴史や担い手から切り離し、あろうことか何の縁もないイエスの名前を持ってくる感覚が個人的には信じられません。これもかなり悪質な文化盗用です。



上の写真はメストリ・パスチーニャの最後の奥さんドナ・ホメーリアです。カンドンブレ・ジ・アンゴーラの古い写真を探していた人が偶然見つけた写真らしいです。私はfacebook上で見つけました。

彼女はインタビューで次のように話していました。ドキュメンタリー『Patinha! Uma vida pela capoeira』(1998)に収録されてます。

“Quando ele morreu, mandaram um caixão de indigente. De indigente! Eu devolvi, cheguei na decorativa, tomei um caixão (que ele não merecia aquele caixão) e sentei no tabuleiro, paguei todo. Graças a Deus eu vendia acarajé. Isto que pagava a funerária”.”

彼が亡くなったとき(市役所は)貧困者用の棺桶を用意した。貧困者用のよ。私はすぐさまつき返して、葬儀屋で別のを買った。彼にあんな棺桶は似つかわしくない。私はアカラジェを売ったお金で全額自分で払ったわ。おかがさまでアカラジェを売れているから、それでお葬式が出せた。